タールは数十種類の発がん物質
ニコチンと並んで、たばこに含まれる悪玉といえばタール。たばこのフィルターに茶色く付着する、ヤニのようにべっとりとして粘り気のある油状の液体です。
たばこの葉に含まれている有機物質が熱分解されることで、約四〇〇〇種類もの化合物が結合してタールになるのですが、そのなかの約二〇〇種類は人体に対して何らかの有害な作用をもつ物質であるといわれています。
有名なべンゾビレンをはじめ、ジメチルニトロサミン、キノリンなど数十種類の発がん物質や発がん促進物質なども含まれていて、正常な細胞を悪性腫瘍（がん）に変性させるのです。
一日二〇本のたばこを一年間吸い続けたら、約牛乳びん一本分のタールが肺に付着するといわれています。
たとえ禁煙をしても、粘質性のタールはすぐに体内からなくなることはありません。
禁煙後も長期間にわたって肺に残り、悪影響を及ぼします。
たばこの煙には多くの一酸化炭素が含まれていて、それを吸い込むことで、さまざまな健康被害を引き起こすといわれています。
一酸化炭素は実は猛毒です。酸素の約二五〇倍も赤血球のヘモグロビンと結合しやすく、それによって血液の酸素運搬機能が阻害されるので、身体が酸欠状態になってしまいます。
たばこを吸い続けていると、体内は慢性的な酸欠状態になり、身体の運動能力は著しく低下します。
また、悪玉コレステロールと呼ばれるHDLコレステロールは、喫煙による一酸化炭素の摂取で酸化コレステロールに変わります。
この酸化コレステロールが血管の壁に付着することで詰まりやすい状態になり、動脈硬化を引き起こします。
動脈硬化は心筋梗塞や脳梗塞などにつながるおそれがあります。
たばこを吸うことの健康被害や身体ダメージといえば、誰もが真っ先に思い浮かぶのが「がん」との関連性で、たばこのタールに含まれている約四〇〜五〇種類もの発がん物質は、肺がんだけではなく、喉頭がん、胃がん、食道がん、子宮頚がんなど、さまざまながんのリスクを高めます。
心配なのはがんだけではなく、COPDをはじめとする呼吸器系の病気、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、動脈硬化の進行による心筋梗塞や脳梗塞、ED（勃起障害）、歯周病、肌の老化、薄毛や脱毛など、たばこは身体にさまざまな悪影響を与えます。
風邪やインフルエンザにかかりやすくなるという点も見逃せません。
「たばこは百害あって一利なし」、たばこを吸う人は、その事実から決して目をそむけず、せめてきちんと理解したうえで吸うことが大切なのです。
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