内臓脂肪型肥満はうつの危険
慢性炎症は、慢性的な心理ストレスによって起こりやすいのですが、慢性炎症の要因としては、もうひとつ大きなものがあります。
それが、肥満で、肥満とは、脂肪細胞が肥大したり、増殖したりすることですが、この脂肪細胞が炎症伝令物質を生産してしまうのです。
炎症伝令物質とは、「炎症を起こせ」というメッセージを脳へと届ける物質です。
その一方で、炎症を抑制する物質だけは生産が少なくなってしまうので、太れば太るほど、炎症は暴走しやすくなるのです。
そして、肥満は、うつの発症リスクを高めることがわかっています。
肥満には、まわりやお尻に脂肪のつきやすい皮下脂肪型肥満と、外見的にやせているとしても内臓の周囲に脂肪がたまりやすい内臓脂肪型肥満があります。
そのうち、メタポリック・シンドロームの原因になりやすいのが内臓脂肪型だということはよく知られていますが、慢性炎症を誘発しやすいのもこの内臓脂肪型の肥満です。
そして、この内臓脂肪型の肥満をもつ人は、うつを発症しやすいということが、アメリカでの大規模研究によって明らかにされたのです。
対象は、約2500人の年配の男女の方々で、年1回、胴まわりの計測、CTによる内臓脂肪の撮影などが行われたところ、内臓脂肪の増加が見られた人には、5人に1人という高い確率で重度のうつの発症が認められたというのです。
さらに、動脈硬化もうつの発症リスクを高める要因です。
多くの調査から、「脳梗塞や脳出血を経験した患者さんの半分近くが、その後、重症のうつを患う」ということが指摘されていました。
加えて、近年、新たに注目を浴びるのが、隠れ脳梗塞とよばれる状態です。
症状がほとんどないので、本人もこの脳梗塞に気づくことはあまりないのですが、MRI検査をすると、脳のミクロな血管のつまりや動脈硬化が見つかります。
そして、こうした人たちには、うつの症状が起こりやすいのです。
さらに、ドイツで行われた大規模調査では、動脈硬化がなくても、肥満、高血圧、高血糖、高コレステロール血症といった動脈硬化予備軍の傾向があると、若くてもうつを発症するケースが多いと報告されました。
つまり、目に見えるような動脈硬化がなかったとしても、体内では確実に慢性炎症が進んでいると考えられ、実際にはそれだけでうつのリスクが上がるということなのです。
そして、そこにはやはり、生活習慣が大きく関わっています。
肥満や動脈硬化ととりわけ関連が深いのが、偏った食生活や運動不足です。
これら、生活のなかの悪習慣も、心身に負担をかけ、慢性炎症の原因をつくる、慢性ストレスとよべるものです。
慢性炎症との関わりが深い身体疾患をもっていると、高い確率でうつを併発することがわかっています。
たとえば、心臓病患者の20〜30パーセント、がん患者の約25パーセント、脳卒中経験者の半分近くが重症のうつを発症するといわれています。
そして、逆に、うつなどの精神疾患が、さまぎまな体の病気の悪化リスクを高めることも明らかになってきているのです。
脳が慢性炎症を起こせば、その影響は炎症伝令物質によって体にも伝わり、体で慢性炎症が起これば、それは同じように脳に伝わるのです。
うつ病がんばるな!
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