薬でうつはなかなか治らない
セロトニンの不足だけでうつ発症の原因を説明できない理由のひとつとして、SSRIだけではうつはなかなか完治しないことがあげられます。
SSRIを飲むと、ほとんどだれの脳の中でもセロトニン量はすぐに増加することがわかっています。
しかし、セロトニンの量が増えた人全員の、うつの症状が消えるわけではないこともわかっているのです。
多くの臨床試験において、SSRIは、これを飲んだうつ患者の6〜7割に効果があると報告されています。
これは研究するのに理想的な条件の患者さんだけで行った試験で、6〜7割という数字は反応率「症状が半減すれば、合格」というものなのです。
実際のところ、半減程度といった半端な改善状況では、症状は高い確率でぶりかえしますし、多くは仕事にも日常生活にも支障があるままなのです。
アメリカでの研究で、3、000人を対象としたもので、薬の効きやすい患者さんだけでなく、診療の現場によくいるような人なども対象としていることから、より現実的な研究だと評価されているのですが、こちらでは、通院して最初に処方されたSSRIを飲んで、問題ないといえるまで症状が改善したのは3割という厳しい結果が報告されています。
抗うつ薬には、SSRIのほかにもさまざまな種類が存在します。
たとえば、セロトニンだけでなく、ノルアドレナリン、ドーパミンなど他の脳内化学物質にも働きかけるタイプの薬の中には、疲労が目立つうつ、入院が必要なぐらいの重症うつ、あるいは、新型うつや原因不明の体の痛みなどには、SSRIよりも効果が期待できるともいわれています。
先ほどの研究でも、SSRIの効果が得られなかったときは、複数のメカニズムに働きかける薬に切り替えたほうが改善効果が高まることが証明されているのです。
薬によって症状が改善していくケースはけっして少なくありませ
ん。
しかし、たとえSSRIでうつが治ったとしても、その理由は、脳のセロトニンが増えたことだけではなく、「未知のものも含め、うつの複雑なメカニズムに働きかけた結果であろう」というのが、昨今の医学的見解なのです。
そして、研究の結果からも明らかであるように、多くの場合、いま、使える薬だけでうつを完全に治すことはなかなかできません。
しかし、現在の日本のうつ治療の現場には、事実上、薬以外の選択肢がほとんどないのです。
欧米では積極的に活用されているカウンセリングも、日本ではまだ十分には普及していません。
将来的にはいまより普及するとしても、希望する全員が健康保険を使って受けられるような状況にはぜったいにならないのです。
また、エクササイズや、サプリメントをはじめとした代替医療にはうつの高い改善効果があるといわれているものの、医療機関などで取り入れられたり、適切に指導されたりすることは、まだ十分には行われていません。
つまり、薬だけでは不十分とわかっていても、薬しかない、というのが日本のうつ治療の現状です。
そして、これが、うつが長引き、こじらせる人が多いことの大きな理由のひとつと考えられているのです。
うつ病がんばるな!
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