ストレスホルモンが脳細胞を殺す
免疫反応において、からだ防衛軍がその仕事を終えると、脳は「炎症を終えなさい」という命令を送ります。
その命令を運ぶのが、コルチゾールなど、俗にストレスホルモンとよばれる抗炎症ホルモンです。
ストレスホルモンというと、なにか悪いもののような響きがあるかもしれません、また、抗炎症薬のステロイド剤と同じようなものなので、副作用が多いというイメージがあるかもしれませんが、じつは炎症の沈静化を促すという、とても大事な役割をになっています。
ケガや腫れもの、リウマチなどの自己免疫疾患、アレルギー性疾患など、炎症を伴う症状はさまざまにありますが、このストレスホルモンがあってこそ、炎症の暴走が防がれているのです。
つまり、適切な量のストレスホルモンは必要不可欠であるわけです。
しかし、慢性炎症が起きているとき、ストレスホルモンは「炎症を終えなさい」という命令を運び続けるので、結果的に過剰に分泌されてしまいます。
すると、とても困ったことが起こります。
過剰に分泌されたストレスホルモンの毒性によって、脳の神経細胞の一部が死んでしまうのです。
脳細胞は生まれたときがいちばん多く、その後は年齢とともに減っていく一方で、子ども時代には健全な発達のために、必要以上にある脳細胞のスリム化が行われることが知られていますし、その後の減少も自然の摂理としての老化現象であるわけですが、それとは別に、うつなどの心の病気を患っていると、脳の中の特定の場所の細胞が急激に死んでしまうことがわかっています。
それを引き起こすのが、ストレスホルモンで、じつはストレスホルモンには、活性酸素などの毒素を発生させる作用があるのです。
特定の場所とは、とくに記憶や感情に関わる海馬領域や扁桃体とよばれるところです。
うつに深く関わるといわれる部分であり、画像を使った研究でも、うつや不安障害の患者さんの多くで、これらの部分が萎縮していることが観察されているのです。
とくに、これらの場所は、脳内の情報伝達ネットワークできわめて大事な役割を果たしていることがわかっています。
そこがダメージを受けると、たとえば、なんでも悲観的に考えてしまうようになるなど、思考や感情に関する情報が、脳内で適切に処理されないといったことも起こりはじめます。
慢性炎症が続いていると、ストレスホルモンも出続けます。
その状態が長期にわたって続いてしまうと、その不具合は脳内の情報伝達にとどまらず、全身の情報伝達ネットワークをも巻き込みます。
しかも、ストレスホルモンには、脳細胞への栄養補給をブロックしたり、さまぎまな化学物質の挙動を狂わせ、情報伝達を混乱させたりする作用があることもわかっています。
そうしたことから、心身にはさまざまな不調があらわれてくるというわけです。
うつ病がんばるな!
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