肝機能の検査の数値の読み方

肝機能の検査の数値の読み方

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肝機能の検査の数値の読み方

肝臓は沈黙の臓器といわれるように、自覚症状がほとんどなく、いつの間にか病気が進行している場合も少なくありません。

これは肝臓がもともと予備能力が高いため、多少障害があっても症状が現れにくい臓器だからです。

したがって、肝臓の健康を守るためには定期的な健診でしっかり検査を受けることが必要です。

肝臓の検査には、大きく分けて血液学的検査と形態学的検査があります。

血液学的検査とはいわゆる血液検査で、肝臓の血液検査の代名詞ともいえるAST(GOT)、ALT(GPT)、γ−GTP(γ−GT)のほか、各種のデータから肝臓の状態を判断します。

精密検査が必要な場合や、明らかな異常が認められるときは、形態学的検査である腹部超音波検査(エコー)、CTスキャン(コンピュータ断層撮影)、MRI(磁気共鳴診断)、血管造影検査などが行われます。

ただ、肝臓のチェックはやはり血液検査が基本で、一般的な健診の条件血液検査でも、肝臓の状態をかなり正確に把握できます。

ですから、自分の肝臓の状態を知るためにも、職場や自治体が実施している健康診断を定期的に受け、その血液検査の内容やデータの意味を理解できるようにしておきます。

AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)/GOT(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ)と、ALT(アラニン・アミノトランスフエラーゼ)/GPT(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ)は、肝細胞中に含まれている酵素で、なんらかの原因により肝細胞が破壊されると、両者ともに血液中に流れ出てきます。

したがって、ふたつの数億が高ければ高いほど、肝炎や脂肪肝など、肝臓になにか障害が起こっていることが予想されます。

また、ALTは正常範囲でも30U/?以上の場合は注意が必要です。

AST(GOT)とALT(GPT)の数億からは次の肝障害が推定されます。

●ASTとALTがともに高い

急性肝炎

●ASTがALTより高い

肝硬変、肝がん、アルコール性肝障害

●ALTがASTより高い

慢性肝炎、脂肪肝

γ−GTP(ガンマ・グルタミル・トランスプチターゼ)は、肝細胞内に存在する胆道系酵素です。

アルコールに敏感に反応する性質をもっているため、アルコール性の肝障害の判断には欠かせない検査指数です。

世の飲んべえには気になる数値です。

日ごろからお酒を飲み続けている人の約50%、アルコール性肝障害のある人はほぼ100%、この数値が上昇しています。

また、お酒を飲まないのにγ−GTPが高い人もいます。

これは肝臓の酸化ストレスが原因ともいわれています。

ALP(アルカリフォスファターゼ)は、γ−GTPと同じ胆道系の酵素で、肝臓で合成されるリン酸化合物を分解する働きをもっています。

肝臓に異常が起こり、胆汁の通り道である胆道に障害が発生すると、ALPは胆汁中に排出されず、血液中に溶け込んでしまうのでこの数値が上がります。

ALPは、肝炎、慢性肝炎、肝硬変などの肝障害のほかに、胆石症、胆管炎、胆道がん、膵臓がん、甲状腺疾患などでも上昇しますが、胆道系の病気のときは、肝障害に比べて数値が急上昇するので区別できます。

また、ALPがとくに高くなる肝臓病に原発性胆汁性肝硬変、硬化性胆管炎があります。

Ch−E(コリンエステラーゼ)は常に一定量が血液中に存在する肝臓で合成される酵素ですが、肝臓のたんばく質合成能力が落ちてくると低下してきます。

したがって、低値の場合は肝炎や肝硬変の重症度を測る目安になります。

逆に、脂肪肝や肥満、糖尿病などではこの数億が高くなります。

これはコリンエステラーゼがたんばく質だけでなく、脂質代謝の影響を受けて増加するからです。

血清総たんばく検査は、血液中に含まれるたんばく質の総量を調べる検査です。

血清のたんばく質は体の代謝をスムーズにする働きをもっていて、常に体内で合成されたり、壊れたりしているのですが、肝臓が健康であれば一定量は維持されます。

ところが、急性肝炎や肝硬変といった肝障害が起きて肝機能が低下してくると、この数値も徐々に低下してきます。

体内に細菌やウイルスなどの異物(抗原)が侵入すると、抗体という一種のたんばく質(免疫グロブリン)が合成されます。

TTT(チモール混濁試験)とZTT(硫酸亜鉛混濁試験)は、その免疫グロブリンを測る指標ですが、両者ともに脂肪肝やアルコール性肝炎では数値が上がりません。

TTTはA型肝炎、自己免疫性肝炎、肝硬変、原発性胆汁性肝硬変や糖尿病、脂質異常症で数値が上昇し、ZTTはウイルス性慢性肝炎、肝硬変、肝がんで上昇します。

実は、ZTTこそ病気を見つける最も重要な検査項目のひとつなのです。ほかの血液検査で異常がなくても、ZTTが高ければAIDS(後天性免疫不全症候群/エイズ)やC型肝炎などの慢性ウイルス感染症、膠原病や自己免疫疾患などが隠れている可能性が高いからです。

また、ZTTは免疫グロブリンの量と相関するので、病気の活動性をみる指標としても重要です。



ビリルビンとは血液を構成する成分のひとつである赤血球中のヘモグロビンからつくられる色素です。

ひとつの赤血球が役割を終え、壊れるときに水に溶けにくいどリルビンがでてきます。

これを間接ビリルビンといい、肝臓の酵素の働きで水に溶けやすい直接(抱合)どリルビンに変わるのですが、肝臓で処理しきれなくなると血液中に増加し、黄痘の原因になります。

このような場合には、赤血球の異常や、肝細胞のどリルビンの取り込みが体質的に悪い状態(体質性黄痘)が考えられます。

一方、肝臓に急性肝炎や肝硬変といった障害がある場合や、胆石症、胆管がん、膵臓がんなどで胆道系が閉塞状態になると、直接ビリルビンが増加する傾向を示します。

ICG(インドシアニングリーン)試験とは、インドシアニングリーンという線色の試薬を静脈注射した15分後に採血し、血液中の色素がどの程度残っているかを調べる検査です。

ICGが血液に入ると、そのほとんどは肝細胞に吸収され、胆汁の中に排出されますが、肝臓に異常があると、そのまま血液中に残ってしまいます。

肝機能が正常であればICGの数値は10%以下ですが、肝炎により肝細胞障害があるときや、肝硬変で肝臓内の血流が迂回しているときはこの数値が高くなります。

血中アンモニアは、腸内の細菌がたんばく質に作用して発生させる有害な物質です。

肝臓が正常に機能していれば、このアンモニアを尿素に変えて体外に排出するので増加することはありはせんが、肝硬変や劇症肝炎になると肝臓の解毒作用が働かず、解毒できなかったアンモニアが血液中に増え、この数億が上昇します。

肝硬変の末期になると、アンモニアが脳にまで達し、中枢神経が障害され、手がはばたくようにふるえたり(はばたき振戦)、奇異な言動をとったり、性格が変わったりします。

これが肝性脳症であり、命にかかわる極めて危険な状態です。

脳血管障害や心臓血管障害を引き起こす動脈硬化の元凶といわれるコレステロールも、実は生命維持には欠かせない重要な物質で、一定量を維持しなければ問題がでてきます。

この検査では、血液中(1dl)に含まれるコレステロールの線量がわかります。

人は必要なコレステロールの10%を食物から取り込み、残りの鮒%は肝臓が合成しています。

したがって、肝機能が低下すると、肝臓でコレステロールが十分に合成されないため、血液中のコレステロールが減少します。

逆に胆のうや胆道に異常が起こると、余分なコレステロールが胆汁中に排出されにくくなるので、血液中のコレステロール量は多くなります。

また、甲状腺ホルモンの低下によってもコレステロールは上昇します。

肝臓でつくられるPT(プロトロンビン)は、血液を凝固させ、止血をする血液凝固因子のなかでも重要な役割を担っています。

PT検査には、血液が凝固するまでにかかる時間を測る検査と、血液凝固が健康な人と比べてどのくらいの割合(%)で働くかを調べるものがあります。

肝臓の機能が低下して、プロトロンビンの合成能力が落ちてその塞が減少すると、止血に時間がかかり、凝固能(%)は低下していきます。

したがって、肝炎が進んでいたり、肝硬変になっている人が手術を受けるような場合は、PTが出血傾向や肝予備能をみる重要なデータとなります。

それほど太っているように見えなくても、中性脂肪(トリグリセライド)値が異常に高い隠れ肥満や、内臓と内臓の問にべッタリと中性脂肪をため込んでいる内臓肥満の人は、将来的に生活習慣病にかかる割合が高くなるといわれています。

また、肝臓が中性脂肪をたくさんため込むと、本書で再三指摘している脂肪肝と診断されます。

このように、健康の大敵と思われている中性脂肪ですが、コレステロールと同様、人間の生命維持に欠かせない大切な物質であることはいうまでもありません。

要は、過不足なく中性脂肪をコントロールしていくことです。

中性脂肪は脂ですから、そのままでは血液中に溶け込めません。

そこで、肝臓でたんばく質とリン脂質で包まれたリボたんばくという形になって血液中に入り込みます。

この検査は文字どおり、血液中のリボたんばくに含まれる中性脂肪の量を測定するものです。

この数値が高いと脂肪肝、動脈硬化、糖尿病、脳・心血管障害など、さまざまな障害につながります。

ちなみに、この数億が150r/dl以上だと高トリグリセライド血症と診断され、総コレステロールやHDLコレステロールなどの数値とあわせて治療の安否が判断されます。

糖尿病の検査では欠かせない血糖値ですが、糖尿病は脂肪肝や肝硬変に合併しやすいため、肝臓病にとっても重要な検査になります。

空腹時血糖検査では基準値(正常値)を多少上回るものの、糖尿病と診断するまでには至らないことがあります。

このような人を境界型といい、診断を確定するために、ブドウ糖負荷試験を行います。

この検査はブドウ糖を溶かした水溶液を飲み、その30分後、1時間後、2時間後の血糖値を測るものです。

血液成分のひとつの血小板は、肝障害が肝硬変に向かって悪化するにつれ、減少してきます。

したがって、肝臓病の進行度をみる目安として重要な検査になります。13万を下回ったら肝硬変、さらに9万を割り込んだら肝がんの発生の可能性が高くなります。

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