示談の有無と刑事責任の関係

示談の有無と刑事責任の関係

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示談の有無と刑事責任の関係

示談とは、加害者と被害者との間の話合いによって、賠償義務を確定し、支払方法をも定めた契約をいいます。

刑事責任と民事責任とは別個のことがらですから、示談ができたからといっても、これは民事の責任を果たしただけであって、刑事責任の成立を否定し、あるいは免除する効果は生じません。

両者はまったく別個の関係だからです。

しかし、そうかといって、何の関係もないということはできません。

刑事責任は、反社会的な行為と結果に対して国が刑罰を科すものではありますが、処罰の対象は人間ですし人格です。

そこには客観的な行為や結果以外に、主観的な人格形成の面が考慮されなければならないことになります。

一般にこれを情状と呼んでいます。

行為者の前科前歴、家庭環境、事前事後の措置、反省、被害者の行動、感情、などがこれにあたります。

交通事故にあっては、被害者の損害とその補償、被害者の感情を無視できません。被害については誠意ある謝罪がなされ、損害も回復され、円満に示談が成立し、被害者も処罰を希望していないときには、これらを考慮して、刑事処分は軽くせざるを得なくなります。

その意味で、示談は重要な意味を持つことになります。

まず、公判請求の前の段階で示談が成立したとします。

加害者は、示談が成立したら、示談書やその領収証を警察や検察庁に提出することです。

そうしますと、事件の大小、結果の軽重、過失の大小によって、必ずしも一律にはいえませんが、検察官の処分のふるい分けに大きく影響を与えます。

たとえば、物損事故の場合は、示談が成立すれば、ほぼ起訴猶予処分でおちつきます。

また起訴・不起訴いずれかに決しきれないような事件では、示談が成立することによって、不起訴を決定的なものとします。

また、公判請求か略式命令による罰金のいずれに決するかがむずかしい、いわゆるボーダーライン上のケースでは、示談ができることによって、罰金刑ですまされることがあります。

このように、検察官の選別段階までに示談が成立することは、加害者にとっては極めて有利なことになります。

公判にまですすんでしまってから示談するくらいなら、一日も早く示談をまとめることが重要なことです。

もっとも、公判でも同様ですが、死亡事故とか、ひき逃げ、酒酔いなどの交通三悪のからんだ事件では、示談ができても、罰金等ですむことはほとんど考えられません。

公判請求の事件ですが、この場合、懲役刑や禁錮刑によって実刑になるか、執行猶予付判決により刑に服することを猶予してもらえるかの重要なカギの一つは、示談の成否にかかわっています。

とくに被害の結果が軽微であるとか、過失の反社会的な内容がゆるやかな場合は、示談ができたことによって、ほぼ執行猶予の判決となることは間違いありません。

ただ、私どもが刑事裁判を担当しておりまして感じることは、悪質な交通事犯をしておきながら、示談さえできれば執行猶予はつくのだなどと、安易に考えている人が比較的に多いということです。



極端な者は、金さえ出せば刑務所にいかなくともよいのだなどと思ってさえいます。

しかし、最近の刑事交通裁判例の量刑は、社会の要請を受けて重い傾向になりつつあります。

東京地裁刑事交通部の判決では、実刑六〇%、執行猶予四〇%などとさえいわれております。

公判請求事件の多くは、被害結果が大であるとか(死亡事故、被害者多数)、無免許、酒酔い、スピード違反による傷害事故であるとか、ひき逃げ事件であるなど、過失の態様が悪質といえるものがありますので、どうしても刑は厳しくなってきます。

このような事件では、示談ができたからといって、執行猶予というわけにはいかないようです。

もっとも、執行猶予の判決は無理だとしても、判決にあたっての量刑上の資料として、示談の成立は刑期に影響を与えます。

示談ができないよりは示談ができたほうが、刑期は短くなるのがふつうです。

また、服役者には、仮釈放といって、刑の満期終了前に釈放する制度があります。

この場合も示談の有無が必ず調査され、一つの資料となります。

したがって、刑事事件にあたっては、元談は一日も早くまとめあげることが、加害者の処遇上の有利な資料となり、量刑上相当程度に影響を与えるものであるのです。

なお、示談はまとまっただけでは意味はありません。

成立にいたるまでの経過に誠意があったか否か、示談内容に努力と誠意があったか否かが問題です。

事故後一回も謝罪にいかずに放置しておき、公判になってあわてて示談しても、まったく意味はありません。

また極めて低い額で示談し、被害者の無知や貧困に乗じたと判断され、かえって情状悪質と認定されたケースもあります。

あるいは、客観的には多額の金額が支出されていても、その実質は強制保険金と任意保険金で支払われていて、加害者本人が腹を痛めていないような場合は、示談の効果を十分に発揮できません。

貧者の苦労した弁償経過が、刑事責任では重要なのです。

ですから、示談の成立にあたっては刑事裁判官の心証に与える影響もよく考慮し、いやしくも、かけひきや取引きなどをして、値切ったりなどはしてはならないと思います。

性格が悪いとか、きたない人間だと評価されないよう、気をつけなければなりません。

どんなに誠意をつくし高額な賠償をしても、示談が成立しないことがあります。

被害者が悪質な者だとか、世間的に無知であるとか、事件屋が介入したような場合です。

こういうときは、示談の成立にあまり気をつかうことはありません。

賠償経過、折衝経過をとりまとめておき、捜査官や裁判官の前に、これらを明らかにしておけばよいわけです。

示談成立の結果が重要なのは民事裁判ですが、刑事では、その経過と人間としての評価が重点なのですから、相手が悪いときは無理をすることはないわけです。

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