損害賠償額の算定
損害賠償額については、絶対的な基準とされるものはありません。
示談は当事者間の合意によって成立するものですから、当事者の納得さえあれば良いのです。
もともと賠償金というものは比較的相村的なものなのです。
しかし、事件の激増にともない、画一的処理の必要から、いくつかの運用基準が生まれてきました。
一番低めなものが自動車損害賠償責任保険(自賠責)査定基準です。
ついで任意保険会社(共済保険を含む)の各種の保険(対人、村物、搭乗者保険など)の運用基準があります。
比較的に、高額な認定基準を発表しているのが、弁護士会のものです。
裁判者は東京地方裁判所交通部などが、一時運用基準を発表していましたが、最近では一切公表していません。
そのため判決例などを参考にするしかありませんが、おおむね弁護士会の発表のものに近いといえます。
保険会社の事故係などは、自社の運用基準を絶村的なものとして、被害者や加害者に説得にあたることが多いのですが、いずれの基準も一応の参考資料にすぎません(最終的には民事の裁判によって決することなのです)。
なお、任意保険に一億円加入していたとしても、無条件でそこまでの賠償金が保険会社から支払われるものでもありません。
保険会社は算定基準から上は支払わないのが原則的運用なのです。
したがって、示談の折衝や成立に当たっては、事前に保険会社とよく相談しておかないと、計算が違ってくることがあります。
とくに、刑事被告人の場合には、保険会社と立場の違い(被告人側が刑の軽いことを願い、保険会社側は支払金額の低いことを願う)がありますので、時には自己の契約した保険会社と深刻な対立を生ずることもあります。
傷害事故の賠償額について一般的な計算方法は次のようなものです。
一応の基準として参考にしてください。
(1)治療費
実費全額、特別個室については、医師の必要性の判断による。
ハリ・マッサージ・温泉治療なども医師の必要性の判断による。
(2)付添費
職業付添人の場合は実費全額。
家族の場合 一日5,000〜6,500円
(3)雑費 入院一日1,300〜1,500円
交通費 実費
(4)休業損害
実損害全額、収入は税金申告などの資料を前提に、事故前の収入を基礎とする。
日給の場合は、(日給×事故前3ヶ月の就労日数)÷90日×休業日数
無職 老人や子供は休業損害は発生しないが、主婦は賃金センサスの平均賃金による
(5)慰謝料
入院 1ヶ月320,000〜600,000円
通院 1ヶ月160,000〜290,000円
<後遺症が残った場合の賠償額の算定の仕方>
後遺症損害等級表により、当該等級を算定して計算します。
労働能力喪失率は、厚生労働省の局長通達によっています。
(1)逸失利益
@事故後に得られるはずであった収入に労働能力喪失率をかけ、中間利息を控除することによって求めます。
A逸失利益の算定方法については、従来から裁判所ごとにその算出方法がまちまちで、特に乳児、生徒、学生等の若者の逸失利益算定額に大きな差異が生じる結果となり、社会問題化していました。
そこで、東京・大阪・名古屋の各裁判所で交通事件を専門に扱っている部の合意により、平成一二年から、基本的に以下のような同一の方式を採用することになりました。
・収入については被害者が乳児、生徒、学生、専業主婦、あるいは比較的若く生涯を通じて全年齢平均賃金又は学歴別平均貸金程度の収入を得られる可能性が高い場合には、全年齢平均賃金又は学歴別平均賃金によります。
それ以外の場合には、被害者の事故前の実収入額によります。
・中間利息控除は、特段の事情のない限り、年五分の割合によるライプニッツ方式を採用します。
〈例〉500万円(年収)×0.79(五級の労働能力喪失率)×16.711(三〇歳の六七歳までのライプニッツ係数)
(2)慰謝料
一級(2,500〜3,000万円)から一四級(80〜110万円)まで障害等級によります。
<死亡の場合の賠償額の算定の仕方>
被害者が死亡した場合には、一般に次のような計算方法が行われています。
(1)治療費
死亡にいたるまでの全額
(2)葬儀費
120万円〜150万円(自賠責は原則60万円まで)
実際の費用ではなく、加害者の負担分として、定型的に処理されています。
仏事、供養、墓石などの費用も、すべてこれに含まれます。
(3)慰謝料
一家の中心 2,600万円〜3,000万円
一家の中心に準ずる 2,300万円〜2,600万円
幼児・老人、その他 2,000万円〜2,400万円
自賠責保険は、死者一人350万円に、遺族一名550万円、二名650万円、三名以上750万円、これに扶養者がいる場合は、さらに200万円を加算します。
香典などは、少額の場合は計算にいれないが、高額の時は慰謝料の一部として計算することがあります。
(4)逸失利益
事故前の収入から、生活費を控除し、就労可能年数(高齢者は平均余命)を掛けて、それまでの利益をライプニッツ係数を掛けて控除します。
収入については、「後遺症が残った場合」の逸失利益と同様に算出します。
生活費控除割合は、一家の中心・女子で三〇〜四〇%、男子単身者は五〇%です。
(例)年収三〇〇万円の三〇歳の独身男性の被害者の免失利益は、300万円(年収)×0.5(生活費)×16.711(六七歳までのライプニッツ係数)ということになります。
<物損事故の場合の賠償額の算定の仕方>
自動車の損害の他、建物、動産、機械、器具などが、これにあたります。
(1)修理費 実費
(2)全損害(修理不能または修理費の方が高くなる場合) 事故時の交換価格
価格の算定については、ディーラーの評価貞、修理業者などの専門家の判定によっています。
(3)代車使用料 修理に要する相当期間、車両購入までの相当期間
(4)営業損失一般には代車使用料のみですが、タクシー、バス、トラックなど代車では営業できない場合には、営業損害の賠償が認められます。
(5)新車、車両の価格落ち 裁判例ではまだありませんが、損害車が新車の場合、特殊の車両の場合には、新車の購入による弁償が認められる可能性もあります。
(6)その他、車に準じます。
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