交差点内で直進車が起こした事故の責任
交差点とは、十字路・T字路その他二つ以上の道路が交わる場合には、その道路の交わる部分をいっています(道交法二条五条)。
交差点内の事故は、全体の交通事故のなかでもっとも多く、事故の態様も多種多様で、その占める割合も交通死亡事故では全体の三七・一% (平成八年)もあるといわれています。
そのため、交差点内の事故を防止し交通の安全と円滑をはかるため道路交通法は、交差点内の通行方法を詳細に定め、自動車を運転する者に種々の義務を定めています。
義務に違反して事故が起きますと、過失の存在が認定され業務上過失傷害罪に該当するものとされます。
交通整理の行われている交差点では、その指示にしたがって運転するのが原則です(道交法七条)。
最高裁昭和四三年二月二四日、同四五年九月二五日の各判決例は、いずれも「運転者は信号機の表示するところにしたがって自動車を運転すれば足り、いちいち徐行して左右道路の車両との安全を確認すべき注意義務はない」としています。
問題はいわゆる見込運転(交差点に到達した時に赤信号が青信号に変わることを見越して運転したり、左右道路の信号が黄信号中に村面信号が青に変わるであろうことなどを見越して発進する場合)の際の注意義務です。
運転者としては、交差点の手前で信号が青から黄に変わった場合には直ちに交差点の直前で停止しなければならない義務があります。
また急停車の措置をとっても、交差点の直前において停止できない場合は、交差点内の道路の幅員や道路の状況などにより適切な措置をとるべき義務があります。
具体的には、村面信号が黄であれば左右道路の信号は赤ですから、道路の状況からして左右の信号が青に変わる以前に交差点内を通過できる場合にはそのまま進行することになるし、道路の幅員が広いため通過できない場合はまず停車の措置をとり、停車後、車の位置や交通状況に応じて、進行車両や横断歩行者の進行の妨げとならない位置まで前進するか後退するかの措置をとるべきです。
この義務をつくしたか否かが、事故発生の場合には争点となります。
義務をつくしていないと認められれば、過失犯として事故についての責任を負担させられることになります。
交通整理の行われていない交差点ではとくに事故が多く、事故の責任をどのようにして決定すべきかについてもむずかしい問題があります。
とくに徐行義務と優先権の関係が争点となります。
まず、左右の見通しのきかない交差点における徐行義務(道交法四二条)と左方優先(同法三六条)との関係についてですが、本来左右の見とおしのきかない交差点で徐行義務が課せられるのは、左右道路の安全を確認し、左右道路から交差点に進入する車両や歩行者との衝突事故の危険を防止するためですから、なにはさておき徐行義務をつくすべきです。
交差点進入前に左右道路に安全確認をし、徐行義務がつくされている場合には、ケースによって過失自体が否定されている場合もあります(最高裁四二年一二月一七日)。
優先道路(同法三六条二項)や、広路進行の自動車などが左右の見とおしのきかない交差点に入る場合に、以前は徐行義務はあるとされていましたが、最高裁昭和四三年七月一六日判決は「交通整理の行われていない交差点で左右の見とおしのきかない道路に進入しようとする場合において、その進行する道路が優先道路の指定を受けているとき、または幅員が明らかに広いため優先通行権の認められているときは、徐行義務があるとは解しがたい」とする考え方を示すに至っております。
判例に変化が見られました。
この判決は実情にマッチした考え方であって、妥当なものと考えられます。
人家の密集している市街地を走行する車が、横丁のあるごとに徐行しなければならないとすると、かえって交通が混乱することからいっても、常識的な見解といえます。
問題は広路と狭路との定義いかんということになります。
この判定はなかなかむずかしいことですが、単に他方より幅員が広いというだけではなく、「明らかに広い」ことを要するとされています。
したがって、交差点にさしかかった運転者が一見して明らかに広いと認めうるものでなければなりません。
一見して誰もが広狭の判断のできるようなところでなければ、広路優先道路ということは困難です。
ですから、運転者としては、はっきりしないようなところは幅員が実際には広い道路であっても徐行すべきだと考えられます。
交通整理の行われている交差点では、その指示にしたがって運転するのが原則です。
また、交通整理の行われていない交差点では、明らかに価先通行権が認められるとき以外は、まず徐行すべきです。
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