自動車の故障が原因で事故が起きたときの責任
道交法六二条によると車両の運転者は、道路運送車両法三幸もしくはこれにもとづく政令の規定により定められた装置を備えていないか、またはこれらの装置が調整されていないため交通の危険が生ずるおそれのある車両を運転してはならないと規定されています。
整備不良車両は交通事故発生の危険をすでにはらんでおりますから、その運転は絶村に見合わせるべきです。
もし欠陥や故障のあることを知っていて運転し、それが原因で人身事故が発生した場合には、業務上過失致死傷罪が成立し処罰されることになっております。
前照燈が全部故障している場合は、夜間運転することは絶対にさし控えるべきです。
二個のうち一個が故障で点燈しない場合も見合わせるべきですが、必要やむをえず運転しなければならないときは、前照燈の前方照射能力に応じた低速度で運転すべきものです。
これを怠りますと、事故について厳しい責任を負わなければならないことになります。
ブレーキやハンドルが最初から故障している車両、たとえばオイル漏れのためブレーキペダルを踏んでも制動効果を生じないとか、ハンドルの遊びがひどくて、いくらハンドルを回しても自由に方向転換ができない場合などは、運転を開始すること自体を避けなければなりません。
このような車両を運転しそれが原因で人身事故を起こした場合は、前記のようにそのような車両を運転した過失により刑事責任を負うことになります。
ブレーキやハンドルに多少の欠陥や故障があり、慎重に運転すれば事故発生をおおむね防止できる程度の車両をやむをえず運転するときは、速度・進路・積載の方法等について、故障に応じた慎重な運転をしなければならない義務があります。
これに違反して、たとえばブレーキのあまい車両を、そのままに高速度で運転進行して事故を発生させた場合には、いかに適確なハンドル操作をしていたとしても、それ自体が過失の理由となりますので、犯罪が成立します。
運転者としては出発前に十分に車両を点検し、不整備車両のまま出発進行しないように注意しなければなりません。
走行中に突然発生した故障によって、事故が発生することもあります。
この場合、その故障の原因と発生の態様によって問題が異なります。
まず運転開始前に車両を点検し、通常人の注意義務をつくして十分に点検したのに、故障がなかったとか発見できなかった場合には、過失はなく一般には不可抗力といえます。
出発前の点検のことを始業点検といいますが、この作業にかぎらず運転中故障を発見したときも、また直ちに運転を中止して故障箇所を発見し修理する必要があります。
たとえばハンドル等の走行装置が故障したことがわかったら直ちにブレーキを踏んで停車させ、フットブレーキが故障したときはサイドブレーキによって停車し、故障箇所の早期発見につとめなければならないわけです。
故障があるのにもかかわらず停車措置をとらず進行を続けて事故を発生させた場合は、仮にその故障の原因について道路の状況なりメーカーに責任があったとしても、運転者自身が事故についての責任を負担するということになります。
むずかしい問題は、いわゆる欠陥車問題です。
もともと自動車自体に固有の欠陥があって、それが事故原因となった場合です。運転者にとって点検作業はもとより、運転方法に最大の注意をつくしたにもかかわらず事故が発生し、これが車両それ自体の欠陥にもとづくものであったような場合などは、運転者の責任であるということは困難となり、メーカーのみの責任ということがいえます。
しかし、欠陥車であることがわかっていて、あえて路上の運転を続けていたとすれば、その責任は、運転者も免れることは困難かと思われます。
結局は欠陥車であったのかどうか、欠陥を知っていたか否か、運転方法や態度に問題はなかったのか否か、などについて詳細な検討が必要です。
最近、特に問題になるのは、車両の故障が発生した後で、その車両の駐車位置、後続車、対向車への配慮の不適切による、追突その他の事故発生が比較的多いことです。
特に、高速道路では、重大な結果を発生させています。
車を道路左端に避護させ、事故車が駐車していることを知らせるための、標識の設置、発煙燈、手信号などによって、十分な村策をとらなければなりません。
故障車をそのままにして、運転者が他へ行ってしまった場合、発煙燈を、車両のすぐそばで発火させたため、もれていたガソリンに引火して車両を爆発させ、車内にいた乗客を焼死させたタクシーの事件などがあります。
あわてることなく、冷静に、運転者としての当然の常識にしたがって、事故防止の対策をとらないといけません。
整備不良の車両には乗らないことです。また、運転中におかしな個所に気づいたら、直ちに停車して確認しなければなりません。
他の車両の動静にも十分に配慮しなければなりません。
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