供述と調書がくい違う場合

供述と調書がくい違う場合

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供述と調書がくい違う場合

警察や検察庁での取調べの際には、全部といってよいくらいに供述調書もしくは供述録取書という書面が作成されます。

これは取調官が被疑者や参考人から聞きとったことを簡明に要約して書面にしたものです。

速記と異なり要点だけをとりまとめたものですから、供述したことがすべて記載されるわけではありませんし、取調官がこれをとりまとめたものであるだけに幾多の問題があります。

権力に対しては猜疑心を持てが、民主主義の教えです。

捜査側を信頼し過ぎて、できあがった調書をよく読んでもらわずに署名捺印をしてしまい、弁護人から調書を見せてもらってからはじめて供述と違うことに気づくということもよくあることです。

まず調書は取調べ側がまとめるものですから、取調官が一定の先入観をもっていたり予断をもっていますと、その方向に取捨選択されて本来の供述と異なった表現で調書がとりまとめられかねません。

被疑者に不利なことのみが書かれて、有利なことは切り捨てられてしまうこともあります。

供述者としてぜひ聞いてもらい、かつ記載してもらいたいことが漏れたり、聞き違いがあったりして、供述者に納得のゆく正確な調書ができない場合もあります。

供述者から見ると、本心にそぐわない調書ができあがってしまうということも決して少なくないのです。

よく裁判になって、法判廷において善かれている内容を否定したり、記載が違っていると争う人がありますが、調書は読んで聞かされており、末尾に署名押印があると、一般には、どんなに争っても裁判所はこれを認めてくれておりません。

調書ができあがったときに、すぐに訂正を申し立てたり異議を述べておかないと、後日になってからでは手おくれとなってしまいます。

供述調書ができあがりますと、取調官は供述調書を読み聞かせて、末尾に供述者の署名押印を求めることになっています。



ですから、このときに、納得のいかない点や、くいちがいがあったらすぐに取調官に指摘して説明を求め、訂正を申し立てることが必要です。訂正をしてもらう場合は、誤ったところ、納得できないところすべてについて訂正を要求することです。

一部分についての訂正のある調書は、訂正の全然ない調書よりも、訂正個所以外はそれがどんなに不利なことでも真実であり、加害者も納得したものとみられ易くなります。

わざとそうした効果をねらった「訂正」をされないように注意することも必要です。

要求した訂正がいれられてから署名押印をします。

もし取調官が訂正の申し出に応じなかったら、断固署名押印は拒絶すべきです。

署名押印のない調書として意味のないものになります。

なお、これらのことは刑事訴訟法に規定されている被疑者の権利ですから、遠慮なく堂々と申し出るべきです。

在宅事件の場合など、自宅に帰ってから訂正をしたい場合には、「上申書」とか、ときには「内容証明郵便」で送付しておくことも検討の余地があります。

供述調書というものはもともと、単なる覚え書きとか、控えというものではありません。

重要な証拠として扱われるものです。

検察官が起訴、不起訴を決定する際の証拠となるのみではなく、起訴されて裁判となった場合には自白調書として基本的な証拠となります。

公判廷になってから、その記載内容と異なることを主張するのはたいへん困難なことです。

また、刑事裁判のみならず民事裁判(損害賠償)の際の資料ともなり、それほどに重要なものですから、いいかげんな気持ちで、その場限りの供述をなし、調書ができてしまっては取り返しがつきません。

がんばるところは、きちんとがんばらなければなりません。

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