飲酒検査は強制できるのか

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飲酒検査は強制できるのか

飲酒運転は、一滴の酒のために、加害者となり、また自ら被害者ともなります。

そこで法律も飲酒運転には厳しい態度で臨んでおり、酒酔い運転で免許取消し、酒気帯び運転で免許停止です。

酒酔い運転とは、アルコールの保有量に関係なく、要するにアルコールを保有しているがために正常な運転ができない状態で運転することをいいます。

他方、酒気帯び運転とは、運転能力に関係なく呼気一リットルについて〇・一五ミリグラム以上のアルコールを保有している状態で運転することをいいます。

飲酒運転の危険なことはくりかえすまでもありません。

まず、飲んだら乗るな、乗るなら飲むなです。

ただ、ここで指摘したいことは、飲酒検査は疑念の余地がないほど正確かということです。

この飲酒検査でよく用いられる方法は、飲酒検知管による方法です。

検知管による検査はそれほど正確ではありません。

飲酒後の経過時間や、飲酒した後うがいをしたか否かでかなりの差が出ます。

さらには温度によっても違うのです。

運転者にうがいをさせないまま飲酒検知を行ったために、公判になって検査結果が排斥された例があります。

これは、検査時、被告人が飲酒したのは二時間ぐらい前であると供述していたので、これを信じた警察官がうがいをさせないまま呼気検査を実施したところ、公判段階に至って被告人が検査の二〇分ないし数分前に飲酒していたことが判明したため、検査結果の正確性が問題となったものです。

京都簡裁昭和五六年一〇月一三日(判例時報一〇三六号一四五頁)の判決は、「右測定は不正確であり、これによっては当時真に被告人が身体に保有したアルコールの程度を測定したものと判断することができないのである」として無罪としました。

なお、この判決には詳細なデーターが引用されています。

検査の際には、右の検知管のほか、鑑識カードというものがつくられます。

これは、警察官が、運転者の態度を観察したり、質問したりした結果を記載したものです。

しかし、この鑑識カードの内容は、その検察官の判断としたところであって、彼が警察官であるというほか、内容が正確であることを裏付けるものは何もないのです。

この検知管による飲酒検査と鑑識カードとを資料として、酒酔い、酒気帯びの判定がなされるのです。

呼気検査については、道交法一二〇条一項で呼気検査拒否罪が設けられていて、平成一六年の改正(同年一一年一日施行)では罰則が引き上げられています。

この「検査を拒む」とは、風船に呼気を吹きこむことを拒んだ場合だけでなく、警察官の呼気検査の求めに応じない行為すべてを含むと解されています。



検知管を所持していなかった警察官が運転者に対し、呼気検査のために派出所まで同行するよう求めたところ、これを拒否した事案につき、神奈川簡裁昭和五六年一月二三日(判例時報一〇〇六号一三五頁) の判決は、「現実に検知管を所持していなくとも、検査のために派出所への同行を求めれば、道路交通法第六七条第二項の呼気検査を求めたことになるものと解されるから、検査のため派出所への同行を拒んだ段階で、本罪が成立するものと解すべきである」との判断を示し、運転者に罰金一万円を科しています。

この条文は、憲法三五条、三一条に違反するのではないかとも思いますが、呼気検査は、道路における危険防止のための軽度の協力義務を運転者に求めるもので違法ではないとするのが判例の流れのようです。

したがって、理由もなくこの検査を拒否することは危険です。

なお、道交法による飲酒検査は、これから車両を運転する者に村してのみなされることになっています。

したがって、これから先運転する予定のない人に対しては、たとえその人に酒気帯び運転の疑いがあっても、警察官において呼気検査を強制的に行うことはできません。

ですから、たとえば、運転中に交通事故を起こし、大ケガをして病院にかつぎ込まれた人に対して、たとえ呼気から酒臭が感じられても道交法による飲酒検査は行うことはできないのです。

ところで、このような場合に飲酒検査ができないとすれば、運転者は飲酒運転の罪を免れてしまいそうですが、そうはいかないのです。

この場合、警察官は犯罪捜査の一環として、運転者の呼気もしくは血液を採取して身体に保有していたアルコールの量を測定することができます。

ただし、この場合でも運転者の意思に反してすることはできません。運転者が呼気または血液の採取を拒否した場合には、警察官は裁判所から令状を得た上でなければ、強制的に採取することはできないのです。

しかし、運転者が意識不明の状態にあるときには、その承諾を得ないまま令状なしで呼気を採取することが実際上行われており、裁判所も、強制力を用いたり苦痛を与えたりしているわけではないとしてこれを認める傾向があります(福岡高裁昭和五六年一二月一五日、浦和地裁越谷支部昭和五六年二月六日、福井地裁昭和五六年六月一〇日)。

なお、失神中の者から令状なしで血液を採取したことを違法とした判例(仙台高裁昭和四七年一月二五日)もあります。

これらは、飲酒検査は任意処分であって、強制されないことを述べたものです。

決して、飲酒運転してもよいというのではありません。

酒の臭気をぷんぷんさせていたり、蛇行運転など、誰が見ても、飲酒運転していることが明らかであれば、現行犯として逮捕されることもあります。

また、身体検査令状などにより強制的に採血され、検査をすることもあります。

また、道交法六五条二項は、酒気を帯びて車両等を運転するおそれがあるものに対して酒類を提僕したり飲酒をすすめた者も処罰する旨規定しております。

もっと重要なことは、酒気を帯びて車を運転することは、重大な事故を引き起こしかねないことです。

権利の主張は、自らが正しい運転をしていることを前提として考えるべきだと思います。

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