自転車による事故の責任

自転車による事故の責任

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自転車による事故の責任

自転車も、自動車と全く同じように、道路交通法による規制村象となっており、つまり、自転車の適正走行義務、夜間燈火義務、飲酒運転禁止等、自動車と全く同じであり、これらに違反すれば、罰則の適用もあるのです。

ただ、現実に、それらの取り締りや、検挙はほとんど行われていないというだけのことであり、法律上は罰金等の処分を受けても文句はいえないということを知っておく必要があります。

ところで、自転車を走行中、過失により歩行者等と衝突して、相手にケガをさせ、あるいは死亡させた場合、どのような刑事責任を負うかについて、この場合は、自動車を運転して、相手にケガをさせた場合とは異なります。

自動車の場合は、業務上過失致死傷罪(刑法二一一条)が成立し、五年以下の懲役または禁錮に処せられる場合があります。

これに対して、自転車の場合は、原則として、過失致死罪(刑法二一〇条)または過失傷害罪(刑法二〇九条)が成立するに過ぎません。

いずれも、重くて罰金刑どまりです。

これは、自転車は、自動車やバイクに比べ、社会生活上、一般的により危険性が小さいと考えられるためなのです。

ただし、自転車の運転者の過失が、重大であるときは、重過失致死傷罪(刑法二二条)が適用される場合があり得ることを注意すべきです。

この場合は、業務上過失致死傷罪と同じく、五年以下の懲役、禁錮に処せられることもあります。

ある主婦が、車道上を時速約一〇キロメートルの速度で自転車をけんけん乗りで走行させ、交差点で信号待ちをしていた約一〇名の歩行者が青色信号にしたがい一団となつて横断歩道内を歩行し始めたところへ、赤色信号を見落としたうえ、歩行者との安全を何ら確認することなく、そのまま突っ込み、その結果、当時六九歳の老女に自転車前部を衝突させ路上に転倒させ、加療約六か月間を要する傷害を負わせたというものです。

第一審の静岡地裁浜松支部は、右主婦の行為に村し、重過失致傷罪を適用し、禁錮六か月、執行猶予三年の判決を言い渡しました(同支部判決昭和五七年三月四日)。

右主婦は、重過失はないとして争い、控訴しましたが、第二審でも、重過失ありと判断されました(東京高裁昭和五七年八月一〇日)。

ちなみに、右二審では、禁錮刑は重過ぎるとして、罰金一五万円に軽減されました。

右事例は、自転車といえども、十分に注意して走行しないと、思わぬ事故を起こし、重大な刑事責任を負わされることがあるのです。

自動車運転者にとって、車道上を走っている自転車の不安定さに危険を感じる瞬間も少なくないと思います。

実際、交差点等で、自動車と自転車が衝突して、自転車が転倒してその運転者が死傷するという事故が毎年相当な数に達しています。

ところで、特に交差点内の事故では、自転車運転者の側にも何らかの過失があることが多いのです。

そのような場合、自転車運転者の過失は、どう評価されるかということですが、本書でもすでに触れられているとおり、たとえ、被害者である自転車の方に過失があっても、それによって、加害者(自動車)の刑事責任が無くなるわけではありません。

被害者側に過失があっても、加害者側に過失がある以上は、犯罪の成立は否定されません。



しかし、量刑は、刑期が短くなったり、執行猶予が付されたり、罰金刑等の選択に相当度に斟酌されることになります。

したがって、被害者の過失が、どのくらいのものかは、実際に、刑事裁判をうけるものにとっては、非常に大きな要素となるものです。

さらに、同じ事故が、民事事件で争われる場合は、過失相殺の法理により、極めて明確に被害者の過失何割ということで、損害賠償の請求額が減額されることになります。

ただ、同じような型態の事故でも、自動車同士やバイクの事故と比べ、被害者が自転車の場合には、過失相殺率は、ある程度低い割合に認定される傾向があります。

これは、自転車という事物の性質上、加害者率が自動車等と比べ、低いという事情があるためと思われます。

過失相殺の事例では、次のようなものもあります。

トンネル内で、自転車を運転中、大型貨物自動車に追い越されようとして、これと並進したとき、自動車の風圧振動で接触の危険をおそれた過度の緊張により、自転車の車輪を左側肩部分に落とし、そのため乗車姿勢の均衡を失って倒れかかり、自動車の左後輪タイヤの側面に接触転倒して、負傷したというものです。

この損害賠償訴訟で、東京高裁昭和五一年九月一六日判決は、被害者自身も「自転車の車輪を路肩に落とした点で自転車運転についての精神上及び技術上の落度が全く無かったとはいい切れない」として、被害者の過失割合を二〇%と認定しました。

この事例なども、刑事裁判では、刑の量定上、相当な考慮がなされるものと考えられます。

自転車を道路上に放置しても、道路交通法上の駐車違反としては、罰則等の処分を受けることはありません。

ところが、近時、大都市通勤圏の拡大により、周辺住宅地の駅前等に、大量の自転車が放置され、時には交通に支障を来たす現象も見られるようになりました。

このような、放置自転車にどう対処すればよいかはなかなかむずかしい問題だと思います。

このような、自転車放置は、だれも、決して好き好んで行うのではなく、通勤等のため、どうしても駅まで自転車を使用せざるを得ず、しかし、駅前には自転車を置く設備、スペースが全くないので仕方なく、道路等のわずかな空間に自転車を放置してしまうというわけです。

要するに、これは、ある意味では、通勤自転車のためのスペースの確保という行政的課題と責任という側面も決して無視できないところに、問題のむずかしさがあります。

それでは、現実に、そのような、放置自転車に対し、各自治体はどのように対処しているのかについて、各市町村では、駅前等に自転車置場を設け、極力そのスペース確保に努力しているようですが、そのスペースも限りがあり、それ以外の放置自転車については市町村独自の条例により、一定の手続きを経て、放置自転車を撤去できることにしています。

自転車も自動車と同じように道路交通法の規制の対象になりますので、法規を守らなければなりません。

しかし、業務上過失致死傷罪ではなく、原則として一般の過失致死傷罪です。

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