少年の交通事故はどう取り扱われるか
少年の交通事件については、少年に対する教育が中心となり、再犯の防止を重点に個別的処遇をこなすことが重点となっております。
少年事件の処遇は、原則として家庭裁判所の決するところです。
検察庁では家庭裁判所を経由せずに少年事件についての起訴・不起訴を決定する権限はありませんし、また家庭裁判所を経由しないで地方裁判所が少年に刑罰を科することもできません(全件送致主義といいます)。
刑事処分に相当するか否かの判断権はすべて家庭裁判所にあり、家庭裁判所が決定しない限り刑事処分権は及びません。
これを家庭裁判所先議権と呼んでおります。
しかし、最近では反則金制度の少年に村する運営によって、実質的には家庭裁判所の権限が大幅に後退を余儀なくされつつあります。
事件が家庭裁判所に送致されるまでの手続きは、これまで成人事件と同様で、捜査については警察・検察庁で行われ、身柄を逮捕・勾留される場合があることも同様です。
また、弁護士を直ちに選任できることも成人事件と同じです。
少年事件では弁護人のことを付添人と呼びますが、保護者はもちろん、少年自身も(未成年であっても)選任権があります。
家庭裁判所は、法律家である裁判官の法律的判断が中心となるのではなく、教育学、心理学、社会学の専門家である少年調査官や、医師である技官、あるいは鑑別所技官らによる、社会調査や鑑別結果等の科学的資料が中心となって、処遇が決定されるところです。
ここでは、処罰ではなく教育的処理が重点となってまいります。
単に違反事実や事故結果ではなく、これまでの違反経歴、生活歴、性格、知能、生活環境なども調査の資料として集められ、その原因が検討され、再び違反や事故を起こすことのないよう処遇の指針が決定されることになります。
このように家庭裁判所には調査官という非行問題の専門家がおります。
調査官は、警察や検察庁から事件が送られてくると記録を検討し、少年・家庭・学校などから事情を聞いて調査し、非行の有無、その原因、今後の村策、どのような処分がふさわしいかなどについて意見をまとめ、裁判官に報告します。
調査官の調査にあたっては、真実をありのままに話し、更生のための味方になってもらうことが大切です。
調査の結果、特別の教育の必要はないと判断されると審判不開始とされ、手続きは終了します。
調査するにあたり、少年にいろいろと問題がありそうなときは、観護措置として身柄を少年鑑別所に送られることがあります。
少年鑑別所は留置場や少年院とは異なり、少年の知能や性格などの資質の科学的調査・鑑別を行うところで、やはり心理学などの専門家である鑑別所技官が鑑別にあたります。
期間は二週間ないし四週間です。
このように調査・鑑別の手続きを経たうえで判決に相当する「審判」 の期日か開かれます。
この期日には、裁判官、調査官、少年、保護者、付添人などが出席します。裁判官は少年や保護者にいろいろと質問をし、調査官や付添人の意見を聴き、また調査や鑑別の資料を参考にして、少年に対する最終的な処分を伝えます。
少年や保護者は裁判官に聞いてもらいたいことがあるときは、その旨断って発言することができます。
なお審判には、警察官や検察官は立ち会うことは認められておりません。
処分の内容は、次のようなものになります。
@不処分
審判の結果、非行事実のないことがわかったとき(無実のとき)、あるいはとくに保護処分の必要がないと判断されたときは、不処分とされ、手続きは終了します。
交通非行事件では、家庭裁判所は、特別の保護処分は必要でないと思われる少年については、これらの少年と保護者を一堂に集めて講習を受けさせた後、不処分の審判をすることが多いようです。
A保護観察
少年や保護者の能力にやや不安が残り、専門家の指導・助言も必要だと判断されるときには、保護観察という審判がなされます。
これは自宅にいながら保護観察所の指導を受けて立ち直らせようとするものです。
保護観察にも二種類のものがあります。
(ア)交通短期保護観察
これは少年について、特に交通安全の教育が必要と思われる場合に、保護観察所が法規講習を実施したりするものです。
この場合、保護司は付けられません。
期間は三か月位とされていますが、成績が悪いと次に述べる一般保護観察に切り替えられる場合があります。
(イ)一般保護観察
交通事故を起こした少年であっても、交通関係のみならず、生活一般について、保護観察所の指導が必要とされる場合です。
少年には担当の保護司が付けられ、定期的に指導を受けることになります。
期間は交通関係以外の犯罪の場合より短かいようですが、六か月から一年位が目標とされています。
B少年院送致
少年や保護者の能力に問題があり、少年の更生のためには少年を施設に収容して、特別の教育を必要とする、と判断されると、少年院送致という審判がなされます。
(ア)長期処遇
非行の傾向が相当程度進行しており、次の短期処遇になじまない少年に対して行われる処遇です。
生活訓練、職業能力開発、教科教育、特殊教育及び医療措置の五つの処遇過程が用意されています。
収容期間は原則として二年以内です。
(イ)一般短期処遇
非行の傾向が相当程度進行しているが、問題性が単純または比較的軽く、短期間の指導と訓練により矯正と社会復帰が期待できる少年に村して行われる処遇です。
教科教育、職業指導、進路指導の三つの処遇課程が用意されています。収容期間は原則として六か月以内です。
(ウ)特修短期処遇
非行の傾向が一般短期処遇の対象者よりも進んでおらずかつ問題性が単純または比較的軽く、早期改善の可能性が大きい少年に対して行われる処遇です。
開放的施設において自主性および自律性を重んじた処遇を行います。
この特修短期処遇では「院外委嘱教育」といって、少年院から委嘱先に通勤・通学させる処遇が積極的に行われています。
収容期間は四か月以内です。
(エ)一般少年院送致
少年について、交通安全のみならず少年の資質一般について矯正・教育が必要とされる場合には、一般の少年院に送致されることがあります。
違反と年齢、資質に応じて、初等・中等・特別・医療少年院のいずれかに送致されます。
C検察官送致(逆送)
家庭裁判所の裁判官が、少年に対して、これまで述べたような保護処分ではなく、成人と同じ刑事処分とするのが相当と判断した場合には、事件を検察官にもどす審判をします。
検察官から送られてきた事件を再び検察官にもどすので「逆送」と呼ばれています。
検察官は家裁のこの決定に拘束され、成人と同様の処分を、地方裁判所や簡易裁判所に求めなければならないことになります。
ただ、事案にもよりますが、逆送された事件の大半は、略式手続きにより罰金に処せられております。
もちろん正式に公判請求(起訴)される場合もあります。これらの手続きは成人の場合と同様です。
家裁の処遇の特徴的なものとして、最終決定をなす前に、試験観察という制度があります。
少年調査官のケースワークによる補導を基調として、少年や保護者の動向を観察し、最終処分を決定する制度です。
軽い違反や犯罪歴の少ない者に対しては書面による注意や、集団講習による講義や映画などをとおしての教育、運転資格についての再教育など、数々のバラエティーに富んだ教育的指導がとられております。
また悪性の進んだものに対しては、二泊か三泊かの合宿訓練に参加させて、裁判官や調査官と寝食をともにし、交通問題についての討議はもとより、朝起床して夜休むまでの生活訓練や、社会生活の基本を学ぶことを重点に、おちついた生活観を身につけさせることなども行われています。
このようにして少年の反省、意欲、保護者の保護能力などの変化を見て、最終的な審判がなされるのです。
この制度は、少年に対する信頼が基礎にあるものといえ、その活用が望まれています。
市原学園は、昭和六〇年四月に、交通短期処遇の決定者だけを対象とする少年院として、千葉県市原市に開設されました。
市原学園は、東京矯正管区(関東甲信越静)における交通短期処遇決定者に村して、短期間の集中的な教育訓練を行う施設です。
教育内容は、交通安全教育に重点が置かれ、生活指導や職業補導も併せ行われています。
処遇期間は四か月です。
収容人員は八〇名で、社会内処遇へ移行できる可能性の高い少年を収容することから、開放附な施設となっています。
少年事件については弁護人のことを付添人と呼んでいます。
付添人には弁護士でなくても就任できるのですが、この場合には家庭裁判所の許可が必要です。
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