現場検証のやり方
交通事件の捜査は、基本的には現場の検証からはじまります。
ここで述べられた指示説明、それにもとづく調査、調書の作成が、事実判断の基礎的な資料となります。
事故の発生報告により現場に到着した警察官は被害者の救護、現場の危険防止の措置を取り終わったら、直ちに捜査を開始します。
これを「実況見分」とか「現場検証」と呼んでいますが、通常は実況見分調書が作成され、その調書の内容は当事者、目撃者等の指示説明、警察官の現場状況の把握が記載された調書部分と、現場の位置関係、事故の概要を記載した見取図などの図面部分、現場の状況を撮影した写真部分の三部門からなっているのが一般的です。
さらにこれを区分しますと、ほぼ次の点に分かれます。
@調書部分
・実況見分の日時、場所
・天候
・実況見分の立会人
・事故発生地点および周辺の状況(道路の幅員、舗装、信号、横断歩道、信号機、勾配、交通量等)
・事故現場の模様
・事故発生状況についての立会人の指示説明
・被害の結果(受傷の部位、程度、車両の損傷部位程度)
・保存された証拠
・警察官の総合認定と判断
A図面部分
・全般的な地図、位置の特定
・事故現場の拡大図(前記調書部分のうち土地の状況については、図面上に図示するものがある。例、歩車道の区別、道路幅貞、標識、路面状況等)
・事故発生にいたるまでの経過図
a 加害者、被害者の進路
b 各当事者相互の発見地点
C 衝突地点
d 車両の停止位置、人の転倒位置
e スリップ痕の有無、長さ帽等
f 路面上の物品に位置等
B写真部分
・全影
・見通し状況
・接触地点の周囲状況
・接触状況
・損害の状況
通常、写真撮影にあたっては、路面にチョークで図示するか、番号札や標識を置いて撮影します。
まず加害者、被害者が交互に現場を指示するわけですが、冷静におちついて真実を述べることが重要です。
時に、被害者の倶述にあうように述べさせたり、警察官の判断を押しつけられることがありますが、遠慮せずに堂々と自分の考えたとおりに指示すべきです。
なお、事故の再現ですから、事故直前、事故時、事故直後のそれぞれについて、正確に記憶を呼びおこして表現することがたいせつです。
信号はどうだったか、路上に駐車中の車があったかどうか、先行車・対向車の有無、被害者の動静はどの辺でわかったのか、他に事故発生の原因となったものがあったか否か、天候や路面の状況で注意すべきものがあったかどうかなどについてよく思いだすことが肝要です。
違法駐車が原因で事故が発生したとしても、このような車は実況見分時までにはどこかへいってしまってわからなくなることもあります。
つぎに、付近に集まってきた人のなかに目撃者がいたら、有利不利にかかわらず、証言してもらうことです。
少なくとも、名刺をもらうなどして住所氏名だけでも把握しておくべきです。
なかにはかかわりあいになりたくなくて、後日になると真実を述べてくれないこともあるので、できるだけ実況見分調書に記載してもらうと、助かります。
また、カメラを持っていたら、すぐに自分でも撮影しておくことです。
電話がかけられれば家族とか友人に電話して、現場にかけつけてもらって撮影してもらうことも、一つの方法です。
事件後一年もたった裁判の際に、当時気のつかなかったことが写真に撮ってあって、事案の解決に重要な手がかりとなった例がよくあります。
一枚の写真の語る事実はきわめて貴重なものです。
さらに、実況見分の際には巻尺で計測しますが、点と線の計測を行い、そのまま図面に記載する場合があります。
このため、加害者の座席の地点のみが道路上に示され、図面に書きこまれることになり、加害車両の幅員等が無視されることになります。
そうしますと、道路の幅員や、路面の状況と加害車両や被害車両の位置関係が十分に把握できず、事案が解明できにくいこともあります。
追い越しや追い抜きの場合の事故とか、歩車道の区別のない場所、センターラインのない場所での事故などの場合には、ぜひ双方の車両の幅員を計測して図面上に表示してもらうようにすることがたいせつです。
最近の道路事情はずいぶん変化しますので、公判になってからでは路面も変わってしまい、加害車、被害車とも他に売却されてしまったりして、事故の再現をするのが困難になることが往々にしてあります。
そのうえ、実況見分調書を基礎にして、供述調書が作成され、さらに検察庁や裁判所においても、この調書が中心となります。
実況見分の図面を中心にして調べが進行するのが交通事故事件の特徴です。
また、民事の損害賠償事件でも、この実況見分調書が利用されますので、そこでの指示説明が重要な鍵を握るものとされています。
なお、最近ではホームビデオが普及し安価に撮影できるようになりました。交通量や現場の立体的な把握にはビデオの研究も必要かと思います。
被疑者の段階(起訴されて被告人となる)では三人に限定され、それ以上の場合には裁判所の許可を要することとなっています。
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