いろいろな肝臓病

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いろいろな肝臓病

@自己免疫性肝炎

免疫というのは、体の防御能力のことで、例えば、はしか(麻疹)に一度かかって治ると、二度とはしかにはかかりません。

麻疹ウイルスを攻撃して、このウイルスに対する防御能力を身につけた(免疫ができた)からです。

自己免疫とは、ウイルスなどの異物にではなく、自分のからだ(たとえば肝臓)を攻撃してしまう反応が生じることをいいます。

なぜこういうことがおこるのかは不明です。

この病気は中年女性に多く、男性はほとんどかかりません。

症状はほとんどありません。

健康診断などで肝臓が悪い、しかし肝炎ウイルスもいない、原因不明といわれたときに、実はこの病気だったということがあります。

中年の女性で肝障害があった場合、この病気か原発性胆汁性肝硬変の可能性はないかと考えます。

そうすると、早期に発見できるのです。

診断は、肝機能検査、抗核抗体(ANA)検査をすればわかります。

確実に診断するために肝生検を行うこともあります。

治療は、免疫抑制剤のプレドニンが特効薬で、はじめ1日6錠(30ミリグラム)を使います。

1日2錠ずつ3回でも、朝4錠、昼2錠服用でもよいです。

このプレドニンで、AST・ALT値が急速に下がり、ほとんど全員がよくなります。

黄疸があった場合は、それも改善されてきます。

プレドニンは、1日6錠を約1か月服用し、肝機能の値がほぼ基準値になったら5錠、4錠、3錠と、1か月ずつくらいかけて徐々に減らしていきます。

そして2錠、あるいは1錠となったら、さらに長期に、何年という単位で飲みつづける必要があります。

適切に服用すればほとんど副作用はありませんが、胃潰瘍、骨租しょう症などにならないように予防します。

A原発性胆汁性肝硬変(PBC)

この病気は女性、それもとくに中年以降の女性に多く見られる病気で、その7割割の人は症状がありません。

たまたま健康診断などでみつかることが多いようです。

この病気は、2つのグループに分けられます。

1つは、黄疸のない無症候性原発性胆汁性肝硬変、もう1つは黄疸のある時期です。

黄疸のない人は、検査では異常がみられたけれども、まだ発病していないと考え、心配することなく、定期的に診察を受けます。

症状のある人は、黄疸がでたり、皮膚がかゆくなったりし、何もできていないのに全身がかゆくなります。

また黄疸はなく、かゆみだけの場合もあります。

血液検査では、ALPやγ−GTP、LAPなどが、とくに高い値を示します。

さらに、抗ミトコンドリア抗体(AMA)、とくにM2抗体を測定し、陽性ならこの病気を考えます。

確実に診断するためには肝生検を行います。

中年の女性で、肝臓が悪い、しかし肝炎ウイルスもいないし原因不明といわれた場合、この病気ではないかと考えられ、検査を行って病名がはっきりすることがあります。



治療としては、ウルソを1回1〜2錠、1日3回、計3〜6錠服用します。

この薬の有効性は確立していて、肝臓の血液検査値の改善、とくにALP値などが下がり、病気の進行が抑えられます。

無症候性の場合でも、この薬を服用したほうが将来に対してよい効果があります。

ウルソは昔、熊の胆といわれた薬をもとにしたもので、胆石を溶かす薬としても用いられています。

副作用はほとんどありませんが、なかには胃痛や下痢がおこることがありますので、消化剤といっしょに飲みます。

また、この病気はビタミンA、D、Kが不足することがありますので、それを薬で補います。

かゆみには、かゆみ止めを用います。

Bヘモクロマトーシス

鉄が肝臓に多量に沈着する病気で、顔色が緑がかった青い色(青銅色)になります。

血液中に鉄が多く、瀉血といって1回に200〜400ミリリットルの血液を抜きとる方法や薬物治療などで、鉄の量が正常となり、改善します。

Cウイルソン病

遺伝による肝臓病で、銅が肝臓や脳に蓄積する病気で、進行すると肝硬変になります。

手がふるえ、ものがつかめなくなります。

銅を正常化するために、D−ペニシラミンが有効です

D特発性門脈圧亢進症

肝硬変がないのに、食道静脈瘤が大きくなり脾臓が腫れる病気で、手術による食道静脈瘤治療を行います。

自覚症状はほとんどなく、健診の際や、腹水がたまったり、突然、静脈瘤が破れて吐血し、発見されることがあります。

E肝アミロイドーシス

肝臓、あるいは全身に、たんばく質の一種であるアミロイドが沈着する病気で、肝臓が腫れたり、腹水や下痢などの症状が現れます。

F日本住血吸虫症

皮膚から肝臓に入って肝硬変をおこし、腹水や脳の症状がでてくる寄生虫病です。

以前は山梨県などに多かったのですが、田んぼの排水設備の整備などで、中間宿主のミヤイリガイが撲滅され、現在この病気はなくなりました。

Gエキノコッカス

エキノコツカスの幼虫、すなわち包虫による病気で、肝臓に腫瘍をつくります。

そのため、がんとまぎらわしい場合があります。

わが国では北海道に多く、キツネ、イヌなどから感染することがあるので、これらの動物の排泄物に注意し、手をよく洗うことが予防になります。

Hアメーバ性肝膿瘍

熱帯地方に多く、なま水などから感染します。

肝臓に膿がたまり、高熱や痛みなどの症状が現れます。

熱帯地方への旅行のときには注意が必要です。

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