鉄分を制限した食事にする
鉄は体の中でとても重要な役割を果たしているミネラルのひとつで、赤血球の中にあるヘモグロビンにヘム鉄として存在し、肺で酸素を受け取り、体の各組織にその酸素を送り届けています。
体の中の鉄は約70％が血液や筋肉に存在し、酸素の運搬や酵素としての役割を果たしています。
残り30％の鉄のうち3分の2は貯蔵鉄として蓄えられ、最も鉄をたくさん貯蔵しているのが肝臓です。
鉄分が減ってくると、血液が運ぶ酸素の塞が不足し、いわゆる鉄欠乏性の貧血になり、動惇や立ちくらみ、倦怠感などさまざまな症状が出ます。
鉄は私たちに不可欠なミネラルなのですが、その半面で鉄は活性酸素の発生源でもあり、体にとって有害物質であるともいえます。
肝臓に蓄えられた鉄によって活性酸素が発生し、その活性酸素が肝臓の細胞を攻撃して、肝機能が悪化します。
それだけでなく活性酸素は遺伝子を傷つけるため、肝がんの発生にも関係していると考えられています。
肝臓で鉄の吸収を抑える酵素が作られているのですが、とくにC型肝炎ではその酵素の産生が減るため、鉄が吸収されやすくなります。
その結果肝臓に多くの鉄が沈着し、そのために肝臓の線維化が進むことがわかってきました。
さらには肝がんへの進展に鉄が関与している可能性も報告されています。
このことから近年、肝臓病では鉄の摂取を抑えることが必要だといわれています。
食物中に含まれる鉄分には、ヘム鉄と非ヘム鉄があり、ヘム鉄は吸収されやすい鉄で、肉類や魚介類など動物性の食品に多く含まれています。
ただし乳製品や卵にはヘム鉄は含まれていません。
一方、非ヘム鉄は吸収されにくい鉄で、大豆製品や野菜など、おもに植物性の食品に含まれています。
食事で鉄分の摂取を制限するには、とくに、吸収されやすい鉄、つまりヘム鉄を多く含む食品を控えるようにします。
しかし、あまりにも鉄分の摂取を控えることを意識しすぎると、食事の栄養バランスがくずれ、たんばく質などその他の大切な栄養素も不足しかねません。
とくに非ヘム鉄を含む植物性食品には、ふだんの食事でも不足しがちなビタミンや食物繊維を多く含むものがあります。
鉄分の摂取を強く制限したために栄養のバランスが壊れることがないように、十分注意が必要です。
お茶にはタンニンが豊富に含まれています。
鉄はタンニンと結びつくと水に溶けにくくなり、小腸での吸収が抑えられます。
食事のときや食後にお茶を飲むことは、弱った肝臓のためには良いことです。
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